曼珠沙華


苔の蔓延る
石タイルの屋上


反対側の校庭から
幾つかの声が
混ざり合いながら
微かに聞こえる


座り込んでしまえば
遠くの山々が見える以外
一面に広がる空


鉄塔が何本か
発電線を繋ぎ


暢気な鳥の囀りまで
のどか過ぎて
時間が止まりそうだ


くわえた煙草に火を燈し
吸い慣れた煙りを
吐き出す


僕の存在も
何もかもが
消えていく場所


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