曼珠沙華
屋上に取り付けられた
スピーカーが
脅威的な音を鳴らし
予鈴を伝え
一瞬 心臓が
跳ね上がる
煙草を石タイルに押し付け
揉み消してから
少しだけ迷ったが
そのまま投げ捨てた
踊り場から
階段を降りて行くと
何処かの教室の
ドアが開く音がする
慌てて階段に隠れ
そっと廊下に
視線を向けると
音楽室の前に
”日高 紫乃”の姿が見えた
日高の後を追うように
背の高い男が
音楽室から出てきて
ドアの鍵を掛けている
あれが 噂の
”西山先輩”
なのだろう