曼珠沙華


何とか笛を借りられたようで
足早に廊下を走り
音楽室へ向う途中


突然 立ち止まった安島が
擦れ違った日高に
声を掛けた


「紫乃」


一瞬 振り返る日高が
困惑した表情で
顔を叛ける


安島は軽く
首を捻り
また走り出す


「誰?」


聞き返すだけが
精一杯だった


< 50 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop