紅い雪が降った夜から
「なんでこんなやつの夢なんか見ちゃうんだろ…」
「それはホラ、僕たちは深く愛し合ってるし」
「………死ね!」
ナタリアは顔を真っ赤にしながら、拳を顎めがけて振り回した。
「もう!リクなんて嫌いだっ!出てけよこの、変態外道偽紳士!」
リクと呼ばれた男はナタリアの罵声を浴び、心外そうに顔を歪ませると演技がかった仕種でナタリアのパンチを受け止めた。
「そんな、照れることはないのに。…っていうかけっこう傷つくよ」
「しっ…知らないよ!どっか行っちゃえ!」
リクはテーブルの上を少し片付け、ドアを開けた。
ちらりと振り返った顔には悲しさと嬉しさがまざった複雑な表情が浮かんでいた。