若葉町物語
いや、本当はもう、気づいていたのかもしれない。
でも、この事実をどこか信じたくない自分がいて──────。
「ちぃすけ、自分の口から言いな」
「うん。あのね、私ね、退院することが決まったの」
ほら、やっぱりね。
「うん、よかったね。おめでとう」
私、今うまく笑えてるかな?
そう思いながら言葉を続ける。
「やっとだね。本当に良かったね」
安田さんも私のあとに続けて言う。
「1年半もの間、本当によく頑張ったね」
…1年半か。
気が遠くないそうだ。
「うん。千花ちゃんも頑張ってね」
ちぃすけは無邪気に笑った。