月詠姫〜癒しと鬼一族編〜
伊織side

「え〜っと…東雲さん…でしたっけ?」

「敬語はいらん。で、なんだ」

僕は…月が去ったあと、その場に残った東雲に話しかけた。

「東雲はさ…どうして月詠守護者になったの?」

「どうして、か…考えたこともねぇな」

「じゃあ、見ず知らずの女の子を守るって聞いて、嫌じゃなかった?」

「そりゃあ、嫌だったよ。ガキの頃は"何で俺が"って思った。だけど、でかくなるにつれて"いつか俺が守るんだ"…そう思うようになった」

「…」

「お前は?あいつの幼馴染みなんだろ?」

「そうだけど…」

幼馴染みを守るのは当たり前ー…だけど、守ってくれるのは、いつも拓真だった…

「僕には、度胸がないんだ…彼女を助けたいと思ってても、足がすくんじゃって…それで、いつも拓真が彼女を守っていた。僕には、彼女を守る資格がない…」

「……はぁ〜!!」

東雲は大きい溜め息をついた後、僕の方を向きこう言った。

「ば〜か!!資格ないとか言うんじゃねぇよ。原田財閥に絡まれた時、お前はあいつを庇ったじゃねぇか。守るとか資格がないとか…そんなの関係ないんじゃねぇ?」

「……そうだね」

東雲はー…拓真みたいだ…
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