月詠姫〜癒しと鬼一族編〜
「この私を誰だと思ってるの?呉服屋の若女将・蘭よ!!」

「そうよね。じゃあ、早速お願い出来る?」

「もちろんよ♪行きましょ、月ちゃん!!」

「はい…」

蘭さんに連れられて私はお店に入った。お店の中は、色とりどりの着物や簪、帯・下駄・巾着などが置いてあった。

「綺麗…」

「でしょ?ここは年中無休だから、いつでも来ていいわよ」

そう言いながら、蘭さんは一着の着物を取り出した。

「これなんかどう?」

黒ベースに裾と袖に桜の花びらが散りばめられている。

「これ高いんですか?」

「いいのよ♪桜華の親友だし!!特別にタダで!!」

「タダ!?ダメです!!」

「なんで?」

「なんでって…見ず知らずの私に、そんなこと…」

「月ちゃん…」

優しくされるのは慣れてない。"月詠姫"になるって決めたのは私なのに…まだ迷ってる。

「いい?月ちゃん…」

「?」

「私はね?両親や妹を水害で亡くして、一人だったの。そんな時桜華に会って…一緒に東楼国来て…あんたに会った時、妹の生まれ変わりかと思ったわ。だから月ちゃん…そんな見ず知らずなんて言わないで?私達…親友でしょ?」

「蘭さん…」

蘭さんの言葉に、私は涙した。蘭さんは頭を優しく撫でて微笑んでくれた…
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