月詠姫〜癒しと鬼一族編〜
そして、羊の刻…私は桜華に連れられて、妙さんの部屋にやって来た。部屋に入ると、妙さんの他に数人の仲居さんがいた。

「お待ちしておりました、月様」

「あ、はい…」

「皆の者!!酉の刻(午後6時)から始まる歓迎会に合わせて、急いで支度しろ!!」

「「「はい!!」」」

そう言うやいなや、仲居さん達は私を鏡台の前に座らせ、テキパキと準備をする。頬紅や口紅、パウダー・アイブロー…見た事ある化粧品がズラリと並んだ。

「月様は普段、可愛らしいので大人っぽい青系を入れてみましょう」

「そうですね。そこに紫色を少し加えてみては?」

「それより、月様のご意見を聞きましょうよ!!」

「月様、可愛い系か大人系…どちらがよろしいですか?」

「お、お任せします…」

「「「はい♪」」」

初マシンガントーク…口を挟む隙もない…

「月、私は先に行ってるわね」

そう言って桜華は、部屋を出ていった。





時刻は、酉の刻十刻前ー…

「さぁ、これで完成ですよ」

鏡台の前には、いつもと違う私が立っていた。昨日買った、紫色の生地に裾と袖に薄いピンク色の桜の花びらが散りばめられている着物。それに合わせるかのように、アイメイクは青が混ざった紫。頬紅はピンク。口紅は赤色。

「いかがです?」

「これが…私?」
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