【コラボ】忘れられないヒト


「あの、関さん。」

「は、はい!」


沈黙を破ったのは、佳乃だった。
会社で上司に名前を呼ばれるのは、こんな気分なんだろうか。
背筋が伸びるとは、まさにこの事。

思わず座りなおしてしまった崇文を、佳乃は優しい眼差しで見つめた。



「好きな人は、いません。」


「え・・・?」



じゃあ何故、あんなに切ない顔をしたのか。
子供だと思って、はぐらかされるのだろうか。

それだけは、嫌だ。


「でも・・・!」

「正確には、いました。過去形です。」


過去形と言い切るくせに、また切ない微笑み。


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