【コラボ】忘れられないヒト
佳乃の胸の中心が、鋭く痛む。


好きだった彼は、本当の名前を教えてはくれなかったから。


年下ということ以外、何もかもが正反対。
比べるのは良くないことだと分かっていても、まだ癒えていない傷が、見えない血を流す。


「ほら、よんで。」


急かされて、痛む胸を隠しながら、佳乃は口を開く。


「崇文・・・君。」

「くん、は、いらない!」

「崇文!これでいいのね!!」


強引だ。
こんなの、強引すぎる。

名前でなんて、呼びたくないのに。
崇文の強い眼が、それ以外を許してくれない。
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