おとこ運
接客の間も何度か視線を交わし、その度に耳の奥で鼓動が鳴った。


時計は待ち合わせの時間が近づいている事を示した。



ここにいちゃダメ・・・・・。



幸せに私はなるんだ・・・・。



そう自分に言い聞かせ席を立った。



会計は他の人で済ませ店を出た。



外は夜のグラデーションが広がり、街は違う表情へと変わっていた。




・・・・・なんで今更会っちゃったんだろう・・・・



鼓動が耳の奥でうるさく鳴り響く・・・・




「待って!」



腕を掴まれ振り返った。



そうであってほしい・・・・そんな思いで目を開いた。


そこには望んでも、そうあってはいけないあの人がいた。



「なんで・・・・今更現れたの?」



薄暗く陰った彼の顔、


愛おしくて・・・・ずっと私を苦しめた顔が


今まっすぐ私を見ている。



「紗英・・・・今幸せか?」


彼は私の左手を見つめ言った。


「あっ・・・・うん・・・結婚・・・するんだ」



掴んだ手を少し弄び、



彼は左手の指環をそっと抜き取り、私の手に握らせた。




そして強く抱きしめ・・・・・・キスをした。




彼の鼓動も聞こえてくるくらい、また抱き合った。





「もう一度・・・・紗英を取り返しても・・・・いい?」





この運を逃したらまた元の私なのかな・・・・・





今度は私から唇を重ねた



そして手のひらから指環がこぼれた。











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