365days
確信の、その


 一緒にいるのが当たり前で、私の髪を戸惑いながら撫でるのは、君の役目だと、信じて疑わなかった。
 
 だから、その気持ちの名前は知らなかった。

「随分とモテるようで」

 私の言葉に、君は慌てもせずに首を傾げる。

「わかんねえ」

 大事なことははぐらかす。君と私はそういうところはよく似ている。他はちっとも似ていないのに。

 今日、君に告白をしていた彼女をどう思っているの?

 何気ないふうに訊けばいいのに。

 私は君の隣に座った。

 君の大きな掌がゆっくりと伸びてきて、躊躇いがちに私の髪を撫でる。

「何?」

 私が訊くと、君はまた首を傾げる。

「何となく、元気、なさそうだから」

 すぐに見破られると、少し悔しい。

 でも、少し嬉しい。

 この気持ちの名前は、まだわからないから、だから立ち止まる。

 そして、この優しい手をまだ感じていたいから、躊躇う。

 確信の、その一歩手前で、私は気づかない振りをする。




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