365days
あこがれ
ずっと憧れていたわけではない。
最初は頼りなさそうな人だな、と思った。でも、少しずつ変わっていった。
仕事にはいつも一生懸命で、好きなものの話になると、こどもみたいに瞳を輝かせた。
だから、憧れた。
憧れが好きに変わるのには、時間はかからなかった。
憧れるから、こんなにも惹かれたのだろう。
「先輩、最近楽しそうですね」
だから、ちょっとした変化にもすぐに気づいてしまう。
「え?」
本人が気づいていないことまでも、わかってしまう。
「綺麗な彼女のこと、考えてるんですか?」
恋愛になんて興味がないと思っていたのに。だから、この気持ちを伝えなかったのに。同じことを共有できて、同じふうに笑えればいいと思っていたのに。
「そういうわけじゃないけど」
先輩は少しだけ照れたように答えた。
一度だけ会った彼女は、綺麗で明るい笑顔がよく似合う人だった。
先輩が選んだ人は、同じことを共有できる人ではなかった。
「幸せオーラ、ダダ漏れですよ」
からかうように言うと、先輩は笑った。
この胸の痛みは、私がこの人を好きになった証だ。
「先輩、幸せになってくださいね」
本当はそんなこと思っていないのに。でも、そう伝えたかった。
だって、そう言えば、先輩は笑ってくれるから。