365days
近距離
気づかないわけがない。知らないわけがない。
だって、そう、あまりにもわかりやすいから。
それなのに、あまりにも切り離しているから。
だから、気がつかない振りをするわけではないけれど、少し逸れたところに気持ちを追いやる。
「わかって欲しいわけじゃ、ないのか」
私は視線を落としながら呟く。
「何の話ですか?」
後ろから振りかかる声に、振り向いた。
「あなたのこと」
「え?」
間の抜けたような声。もう何度も聞いた。
「ウソ。ちょっと、ね。そう、関係ないこと」
私の言葉に、はあ、と頷いて隣に座る姿は、何だか少し愛しい。
そんなに切り離さなくてもいいじゃない、と、思うけど、そんなところがいいとも思う。
仕事と自分の気持ちを別々に考えられるのは羨ましい。
「そのうち、話すかもね」
私が言うと、また、はあ、と頷いた。
その時は、切り離して考えられないようにしてやろう。
少しだけ意地悪な笑顔を見せた。