あの頃のように
 * * *


「実家暮らしだったんだな」


金曜の夜。

会社から家に戻ると、そんなつぶやきが思わず口から漏れる。


会社へ行く途中、物を取りに行きたいという沙稀を車で家まで送ったら、着いた先は立派な一軒家だった。

てっきり賃貸で一人暮らししてるもんだと思っていたから、ちょっと驚いた。


「うん」

「……だからあんなに安月給でもやっていけてたのか」

「……また安月給とか言う」


むくれる様子がユカそのものだった。


「確かお父さんと2人なんだったな。

ここに来るのをお父さんには言ってあるのか?」

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