あの頃のように
(……あ)


自分の、ハッと息を吸い込む音が聞こえた。

沙稀はていねいに繰り返す。


「あなたのお父さま——前島元国交相——が、いわゆる“企業再生”させた、NALよ」

「……」


なかなか言葉が出てこなかった。


「なるほど……ね。

そういうことか……」


だから俺に近づいたのか――


NAL再生の真実を明かす突破口として、脇の甘い俺に――



 * * *

< 108 / 168 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop