あの頃のように
「ほんとに最後までやれって言ってるわけじゃない。

それっぽい絵が撮れたら、十分ネタになるだろうからね。

途中で逃げ出せばいい。

本当にやばそうだったら、俺が踏み込むよ」

「……」

「っていうのはさ。

前島は息子にひどく期待していてさ。ずいぶんご自慢の息子らしい。

確かにかなり優秀らしいんだよ。

だからこそ、息子が——」

「……山下さん」


思わず山下さんの言葉をさえぎった。


「ちょっと待って。それこそ、犯罪になりませんか?

脅迫でしょ、だって」

「……沙稀ちゃんは賢いね、相変わらず」


電話の向こうで、苦笑するような声がした。

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