あの頃のように
(——探してくれてたんだね)


それは、恨み、怒りから。

決してあたしに会いたいと思ってくれたわけじゃない。


そんなこと、わかってる。


でも、忘れられるよりはいいかもしれない。

憎まれる方が、忘れ去られるよりも。



あの頃、どんなに「沙稀」って呼んでほしかったか。

あとになって気づいた。


「ユカ」と呼ばれたあたしは、別の人間だったから。



(——バカね。

あの人があたしのことを許してくれるはずがないのに)


じわりと滲んだ涙を急いで拭うと、ひとり、そっと首を横に振る。


この2年の間、あの人のことを忘れたことはなかった。

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