あの頃のように
でも、あたしに“愛してくれ”と言う資格なんてない。



(さ、時間だ)


ブランドものの、マルチストライプのマフラーを巻く。

これは実は、パパのマフラー。

潤也さんの真似をして、去年のパパの誕生日にプレゼントしたものだった。


パパは「こんな派手なマフラーは巻けない」なんてぶつぶつ言ってたけど。

実はとっても喜んでくれてるって、あたしにはわかってた。


マフラーを巻く季節までに、元気になって退院してほしかった。

でも、一度もこのマフラーを巻くことなく、パパは亡くなった。



(今日も寒いね、パパ。

このマフラー、暖かいよ)

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