あの頃のように
あの頃のような、やさしい笑顔。


「乗っていく?」


「……潤也さん」


潤也さんは車から降りると、言葉もないあたしの方に手をすっと差し出した。

あたしの目をまっすぐに見る、穏やかで、真剣なまなざし。



「なぁ、沙稀。

今さら、なんてわかってるけど……


過去のことはすべて水に流して——


最初から――いちから俺と、付き合ってくれないかな」


「……潤也さん」


潤也さんはかすかに微笑んだ。

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