あの頃のように
何となくその後ろ姿を見ていると、彼女は何度か振り返って、俺に向かって頭を下げた。

そのたびに自転車がゆらゆらして、車道に飛び出しそうになる。


(おいおい、自転車をこぎながら振り返るなよ)


危なっかしい子だ。


俺は頭をかきながら、颯爽と自転車で走っていく彼女を見送っていた。



 * * *



(なんだか……場違いだな)


人々でにぎわう、休日のショッピングセンター。

女の子ばかりの売り場で、俺はそわそわしながらうろうろしていた。

すれ違うたびにジロジロ見られている気がする。


(別に下着売り場じゃないんだから、男がひとりでいてもいいじゃないか)


母の誕生日にはいつも花かケーキだったけど、去年から何かモノを贈ろうと決めていた。

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