あの頃のように
「うちは……お母さんは小さい時に死んじゃったから。

お父さんも再婚しなかったし、ずっと父ひとり子ひとりで……」


(兄弟もいないのか)


「……ごめん。大変だったんだね」

「こっちこそごめんなさい、謝らないで。

お母さんのこと、全然覚えてないし、大丈夫だから」


申し訳なさそうに眉を下げて肩をすくめる、その様子がとてもかわいくて。


「そっか……。

お父さんは、お仕事は?」


そう聞かれて、ユカは一瞬、躊躇したように見えた。


(——?)


「——普通の会社員。

……今はもう退職してるけど」

「もう? まだ退職するような年じゃないんじゃないの?」

「まぁね。でも……ちょっと事情でね、早期退職したんだ」

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