あの頃のように
「別に否定してるわけじゃないよ」


ケーキ皿に残ったクリームを名残惜しそうにフォークでかき集めながら、ユカは軽い口調で返した。


「マジメにコツコツ働いてる人が報われる社会になってほしいだけ」


ユカは自分の言葉にウンウンとうなずいて続けた。


「まあね、ちゃんと血液が流れてくれたらいいんだけど、ほら、今はデフレでしょう?

だからどうしてもみんなお金を貯め込んじゃうよねぇ。

モノの値段がどんどん下がっていくから、相対的にお金の価値が上がっちゃうわけだし。お金持ってる方が得だから。

それで物が売れなくて、工場はライン止めちゃうし、失業者も増えるし給料も下がっちゃう。

んで、さらに物が売れなくなる」

「……うん」

「こんな悪循環を、民間じゃとても止められないよね。

リスクが大きいから誰も大きな投資なんてできないし、雇用も増やせないから。

止められるのは、儲けを気にせずお金をジャブジャブ使える“国”しかないのに。

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