あの頃のように
どうして政府が公共事業を4割近く減らしたぞーなんて大きな成果みたいに言ってるのか、不思議でしょうがないんだよねぇ」

「………」


ユカは口をつぐむと、フォークについたクリームをいとしそうにペロリと舐めた。


(ああ……)


そのときの俺は多分バカみたいな顔をしていたに違いない。


(ユカの言うとおりかもしれない)


“公共事業は悪”なんて漠然と思ってた自分に気づく。

確かに、使いもしないハコモノをぼこぼこ建てて維持費で財政難とか、公共事業には無駄も多いんだろうけど。

需要の少ない時は穴を掘ってまた埋める公共事業でいいからやれって、かのケインズも言ってたんだよな……


(しかも、公共事業の削減をアピールしているのは、前島国交大臣――まさに俺の親父だし……)


さっき親父の話が出なくて良かったな。


俺は内心胸を撫で下ろしていた。

< 31 / 168 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop