あの頃のように
「そうですね」

「んじゃ、よろしく」


切れた受話器を見つめながら。

こないだ会ったときの、沙稀の悲しげな目を思い出していた。

ふっとまた、思考が過去に連れていかれそうになる。


(クソ。

どうして俺が——)


ふぅ。

ため息をひとつついて。

気を取り直して外線ボタンを押した。


「あ、どうも、柴田さん。A***の前島です。

ちょっと今日そっち方面に行くんですが、ついでにお伺いして少しお時間いただいてよろしいでしょうか。

はい、例の営業の子の件で……」



 * * *


「あーどうも」

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