あの頃のように
「今日は高城の使いっ走りなんで」


挨拶に混じって聞き慣れた声が耳に飛び込んで、あたしは思わず体がびくっとなった。


(潤也さん……)


こっそり様子を伺うと。

潤也さんのすらりとした姿が、ミーティングルームの扉の向こうに消えるのが見えた。


(君はあの会社で一番経験が浅いね)


こないだ潤也さんが言っていたことを思い出して、ちょっとブルーになる。


背後のミーティングルームが気になってもやもやしていると。

5分ほどして、開いたドアから柴田さんが顔を出した。


「沙稀ちゃん、ちょっと」


(来た)


「失礼します」

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