あの頃のように
これまでのデートでいろんなことを話したのに、ユカのことは何も知らなかった自分に気づく。

自分からはプライベートを一切話さないユカ。


「お見舞いとか、行ってるの?」

「週に3回くらいは、着替えを持って行ったり買い物して行ったりしてるかな。

病院にもコインランドリーはあるんだけどね。いつもいっぱいだから」


ごく当たり前のように言う。


(ああ――)


ユカにとって、これが当たり前の世界なんだ。

兄弟もいない。

お母さんのことを覚えてもいないと言っていた。

ユカにとっては当たり前すぎて、わざわざ話すほどじゃないことだったのかもしれない。


ユカが真っ暗な家に戻って、まず電気を点けるところから始める。

黙ってひとりでご飯を作って食べて、お父さんの服を洗濯しては病院へ持っていく。

そんな光景が目に浮かんだ。

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