あの頃のように
「潤也さんは、やさしいね」

「……」

「あたしにあんまり、やさしくしないで」

「……?」

「じゃないとあたし……」


続きの言葉は曖昧に消えていく。


「……じゃないと?」

「……」


ユカは何も言わず、ただ困ったように肩をすくめただけだった。


(じゃないと、何?)


ドクン。

心臓が大きく跳ねる。


言葉が出ない俺に、ユカは不意ににっこり微笑んだ。


「早く行かないと、バイト遅れちゃうよ?」


そのにっこり微笑むツヤツヤした唇から、目を離せなくなった。

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