あの頃のように
「髪、ちゃんと乾かさないと風邪引くよ」

「うん。

まだ寝てるかと思って……ドライヤーはうるさいかなって」


ちょっぴり微笑むと。

ベッドに近づいて、さりげなくシーツをくるくると巻きとった。

何も言わずにまた洗面所のドアの向こうに消える。


ドライヤーの音にかぶせて、洗濯機の回る音がした。



しばらくして出てきた沙稀はセーター姿で、すでに出勤モードだった。

また何も言わずにバルコニーに出て、慣れた手つきで手際よくシーツを干す。


その後姿を見ていて、俺はようやく気づいた。


「沙稀」

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