あの頃のように
寒そうに口元で手を温めながら、窓からするりと入ってきた沙稀は顔を上げる。


「——まさか……おまえ、


初めてだったのか」


「……」


沙稀は気まずそうにうつむくと。

頬を少し赤らめて、早足でポール・スタンドに向かった。

無言でコートをすばやく羽織る。


(——なぜ?)


てっきり慣れてるんだと思ってた。

だって、目的のためには、自分のカラダさえ道具に使おうとした。


……そんな子じゃないか。

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