【超短編】Train Station
買った珈琲を握り締め、ホームの待合室へと向かった、
が、
「なんで…一つも席が空いてないの‐」
こんな時に限って、とイラつく気持ちを抑えながら、
近くの柱の影に、隠れた。
それでも、風は、ヒュゥッと吹き体温を下げていく。
‐珈琲、冷めない内に…。
静かなホームに、プルタブを開ける音が、響いた。
「‐ヒッ」
少し遅れて聞こえた、小さな悲鳴。
柱の向こうを覗けば小柄な女性が居た。
驚かせてしまったか、と焦って、声を掛けた。
「あの…だいじょぶですか?」
体を、ビクッと揺らし、こちらを向いた、
彼女は…
「あ、はい‐だいじょ…って、りっちゃん!?」
元カノ、だった。
「な、なんで、ここに?」
「え、りっちゃんこそ、なんで?」
‐質問を質問で返すなっ!
思わず、本気のツッコミを入れそうになりながらも、気持ちはどこか晴れ晴れしていた。
「会社、この近くなんだ。イツキは?」
「私もこの辺なの。ふふっ。」
「そっか‐」
久々に見た、彼女独特の笑顔に少し、見惚れていたのは、俺だけの内緒。