【BL】幼なじみと恋をしよう!?
今の恭一に食欲なんてない。
「いらない……」
「珍しいな。どこか悪いのか?」
「そういう訳じゃないんだけど」
近藤のことで悩んでいると言うのに、目の前の本人はまるで何事もなかったかのような振る舞いだ。
「ちゃんと食わないと体に良くない。」
誰のせいだと言ってやりたいが、忘れろと言われた手前反論できない。
「そう言えば本屋行きたいと言ってたよな?今日の帰りはどうだ?」
「き、今日!?」
今日の帰りは近藤に捕まらないように、一人で帰る気でいた。
一緒に帰ると登校の時のように、ぎこちなくなってしまう。
「あー……えっと……そうだ!今日バイトなんだ!」
絞り出した逃げ道に、近藤は怪訝な顔をする。
「今日水曜日だ。バイト休みだろ?」
「あ………」
毎日一緒に居るのだから、恭一のバイトのシフトぐらい近藤は知っている。
なんて浅はかな嘘をついてしまったんだと、恭一は自分を心の中で叱咤した。
「………やっぱり変だな、今日のお前。」
「そんな事ねーよ。」
「気にしてるんだろ?昨日のこと。」
「…………っ」
図星をつかれると何も言えなくなってしまう。
窺うように近藤を見ると、昨日見せたあの寂しそうな顔で笑っていた。
恭一の胸が、また何かに鷲掴みされる。
「忘れろって言ったろ?」
そう言って近藤は立ち上がり、食堂から姿を消した。
「忘れろなんて……無理だろ。」
恭一は胸に残る痛みに、しばらく浸っていた。