『キセキ』
私を育ててくれた家政婦さん。

メイド、執事。

ありがとね。

さようなら。

それだけ呟いて私は海へ入っていった。

少しだけ冷たい海の水。

それが段々と上に上がってゆく。

…やっとこれでツライ思いをしなくて済む。

波が邪魔で上手いように歩けない。

けど私は前に進む。

早く、早く楽になりたい。

早く……

「おいっ!!何してんだよっ!!!!」

いきなり聞こえたその声で私は後ろを振り向いた。

後ろには私と同い年ぐらいの男の子2人。

2人は服が濡れることも考えずにずかずかと海に入って来る。

じゃぶじゃぶと音をたて私に近づいて来る。

やめて…

止めないで……

もうこれ以上…

ツライ思いはしたくないの……

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