真夏の夜
「山田君結婚してないんだよ?」
「え!?」
「婚約だって、まだ」
「そうなの?」
「うん、結婚届も出してないって」
私は鞄の中から口紅を出した
「それ、早く言ってよー」
「私だって城田君と話して初めて知った」
私は鏡を見ながら口紅を塗る
美香はファンデーションを付けていた
「そうだったんだ」
「うん、どうするの?」
「どうするって、私、その女の人の幸せ壊す気ないよ」
「その方が良いに決まってるけど無理してない?」
「無理しなきゃいけないんだよ」
「美香・・・」
美香はファンデーションを鞄にしまった
「私、平気だよ、なんてことないから」