ソウル◆チューン
『がうっ。がうがう。』
「二年前、クーを産んだ母は、餌を探して山を歩いていた。『がう。』子供を連れていた母は気が立っていて、山にいた妖に気付かず争いになり殺されかけていた。『がうっ。』そこに貴女が通りかかり止めてくれた。助かったので礼を言いたかった。ありがとう。…と申しております。」
「そんな事情とは知らなかったが、確かにそんな事があった。君は本当にその子熊と話せるのだな。」
「まだ感性が豊かなのよ。そんな子がいてもおかしくないかもしれないわね。」

二人の言葉に、女の子は一瞬眉を寄せた。

「…お二人共、天狗学園の中等部ですわね?私もこの度、こちらに入学致しました。後輩になりますので宜しくお願い致します。」

頼子は丁寧に挨拶する加代を上から下まで見た。

「中学生?てっきり小学四年生位かと…」
「頼子!」
「良いんです…私、よく間違われますので…『がうがう。』頼子様、何か変わったモノを持っているな。と言っております。」
「変わったモノ?…まさか…」
慌てて鞄の中を覗くと、御札の一枚が光っていた。

「御札が共鳴しているみたい。」

奈都が手にした御札より加代は背後を見ていた。

「随分、古風な方とご一緒ですのね。『がうっ!』どうしたの?クー。なんだか雅楽が聞こえますわね。」

一瞬にして光に包まれた加代が、クーと共にその場から消えた―
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