ソウル◆チューン

車を降り、客間らしい豪奢な部屋に通されると、そこにはメイドやら執事やらがお茶やお菓子の用意をしていた。

「あっ、あのお菓子、何て言うモノかしら。」

奈都はお菓子の(おそらく調理法)が気になっているようだ。
頼子はそれよりも準備に勤しむ大人達の妙な緊張感が気になっていた。

「それで、お嬢様。大変申し訳難いのですが…」

珍しく言い淀む等々力に

「まさか…お兄様達にも言ったのね!?」

言った瞬間、客間の入り口が開き四人の大人が入ってきた。
一気に空気が緊迫し、周りが一斉に頭を下げる。

「はじめまして。水原頼子と申します。」

頼子はゆっくり立つと、その四人に向かって先に挨拶する。

「はじめまして。渡辺奈都と申します。お招きありがとうございます。」
「まぁまぁ！お二人共、美人さんですこと！とてもしっかりなさってますのね。私、母の美代でございます。」
「はじめまして。父の昇造です。私共の我が儘でお呼び立てして申し訳ありませんね。」

のんびりしたお嬢様ﾀｲﾌﾟの母親と、何処にでも飛び回って仕事をバリバリこなしそうな逞しい父親だ。

「加代～！良かったね～！家にお友達を招待するなんて初めてじゃないか！兄さん感激だよ！」

挨拶している間に、真っ直ぐに加代を抱き上げて感動している。

「雄一郎お兄様。いつまでも私を子供扱いなさらないでください。」
「あぁっ！加代ごめんな～。」

不機嫌に顔を背けてしまった妹を慌てて降ろす。

「雄一郎兄さん、ご友人方に自己紹介もしてませんよ？失礼しました。こちらが長男の雄一郎で父の会社の専務をしております。そして僕が次男の賢司です。医師をしております。」

熱血パワフルな雄一郎と、冷静で優雅な賢司。対照的な兄弟である。