ソウル◆チューン
「まぁまぁ。騒がしくて申し訳ありませんね。年の離れた妹ですので可愛くて仕方ないみたいですの。さぁ、いつまでも立ち話なんて失礼ですわ。お茶にしましょう。」

美代の言葉に、それぞれ席に着く。

「いや、しかし水原さんの娘さんとはね。世間は狭いもんだ。」
「…父をご存じなんですか?」
「お父上は私達の業界でも有名…」
「坂田財閥の会長とお知り合いとは、初めて伺いました。」

頼子は自分の知らない、父親との関係を語られて戸惑っていた。

「あなた!…えぇ、偶然危ない目にあったところを水原さんに助けて頂いたのが、ご縁で…ねぇ?あなた。」

足元では美代が昇造の足をヒールで踏んでいた。

「…そうなんですよ。ハッハッハ!」
「まぁ!お父様。そんな事がおありでしたの?」

加代は話に感動しているようだ。
一方、奈都は賢司をじっと見ていた。何処かで会ったような気がするのだが…

「渡辺秋穂さんはお母さんですよね?何度か病院ですれ違ってますから、僕の顔に見覚えがあるのでしょう。白衣を着ていれば分かるかな?」

その視線に答えるように賢司は微笑んで言った。

「あぁ!やっぱり先生でしたか。いつも母がお世話になっております。」
「何だ奈都。秋穂さんの担当の先生なのか?」
「担当医ではないんだけど、時々代理で診てくださるの。」
「まぁ…不躾な質問で申し訳ないのですけれど…お母様は入院なさっているの?」
「はい。二年程前から…私は今は水原家でお世話になっております。父は他界してますし。」
「まぁ本当にしっかりなさってること。家はこの通り娘が一人で、甘やかして育ててしまいましたので、中等部でも馴染めるか心配しておりますの。」

美代はしきりに感心している。

「加代さんとは学年こそ違いますが友人ですし、力になりたいと思います。」

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