ソウル◆チューン
 ―翌日、10時に加代がやって来た。等々力が大きな箱を抱えている。

「遅かったな、加代。」
胴着のまま出迎えた頼子は、差し出された箱を軽々と担いだ。

「あまり早い時間でも失礼かと思いまして…」
「頼子、頂き物?お気遣いありがとうございます。加代ちゃん、いらっしゃい。」

私服にエプロン姿の奈都が、玄関に出てきて言った。
その後ろからのそりと若い男が出てきた。等々力がさりげなく加代を少し後ろに下げる。

「警戒せずとも良い。これが父だ。親父、頂き物だ。奈都に聞いてしまってくれ。」

ひょいっと箱を渡すと

「あぁ。それはご丁寧にありがとうございます。私が頼子の父の頼良です。たいしたおもてなしも出来ませんが、どうぞごゆっくりなさってくださいね。」

箱を持ったまま頭をさげた。

「お邪魔致します。私、坂田加代と申します。『がう。』こちらが…」
「ほぅ。熊五郎くんか。よろしくな。」
「!?クーの言葉が分かりますの?」
「?分かるよ?さぁ、どうぞ上がってください。」

何でもない事のように答え、先に台所へ行ってしまった頼良を加代は唖然と見送った。

「加代ちゃん、師匠は色んな事を卓越した人だから気にしない方が良いわ?どうぞ上がってください。」

古くはあるが綺麗に掃除の行き届いた和室の客間に通される。直ぐに奈都が抹茶とお茶うけを持って戻ってきた。

「お茶は頼子が点てたのよ。お菓子は私が作ったの。召し上がってみて?」
「凄いですわ!頼子様は茶道もたしなまれていらっしゃいますのね…奈都様のお菓子も素敵ですわ!」

感心している加代に

「茶道は精神統一の一つで習ったのよ。料理は私の趣味なの。」

奈都が謙遜して言った。その後ろから頼良が現れ

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