ソウル◆チューン
「落ち着いてください。等々力さん。それは師匠に任せれば良いそうですから…」

奈都がなだめながら言うと

「私がどうかしたのかい?『がう。』」

当人がクーを連れて戻ってきた。

「親父、話はついた。後は任せて大丈夫か?」
「良いよ~。任せなさい!じゃっ、早速行こうか?加代ちゃんと熊五郎くんだけついておいで。」
「はっ、はいっ!『がうっ。』」

そうして道場に入ると内鍵をかけてしまった。

「何をされるのでしょうか?」
「心配ならそこで聞いていると良い。私は務めがあるので少し失礼する。」
「あ。私も片付けがありますので失礼しますね。」

道場前に等々力を残し、二人は去って行った。
ここからは等々力が聞いていた中の様子である。


「それじゃ加代ちゃん。熊五郎くんを下ろして、この棒を握ってみようか。」
「えっ!?あ、あの…」
「まぁオジサンに騙されたと思ってやってみようよ~。」
「私、こんな事は初めてでどうしたら良いか…」
「怖くないからね?さぁ握って…そう、そのまま握ってごらん?」
「こう…ですか?」
「うん…良いよ…もう少し強く握ってくれるかい?」
「このくらいですか?」
「あぁっ!筋が良いね…」

そこまで黙って聞いた等々力は、ついに我慢の限界に達した。無理矢理入り口を開けると

「ぅお嬢様ぁ~!!!いけません!」

叫びながら飛び込んで行った。木刀を構えていた加代はビックリして振り下ろした。

バキッ!!

木刀は畳を突き破り、見事に床まで粉砕した。

「あぁっ!申し訳ありません!」
「良いんだよ。驚いて集中力がきれちゃったんだね~『がうぅ。』熊五郎くん。等々力さんも加代ちゃんが心配なんだから…」

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