ソウル◆チューン
どうやら完全に等々力の勘違いである。加代はとても珍しく、怒りに体を震わせていた。

「等々力~~~っ!!!」
「申し訳ありません!お嬢様!」
「私の許しがあるまで側に来てはいけません!良いですね!?折角、頼良様が協力してくださっておりますのに失礼ですわ!」
「しかしお嬢様!」

なおも言い募る等々力から顔を背ける。

「責任をもってお預かりしますので、ご安心ください。じゃぁ加代ちゃん、移動しようか。床が危ないからね。」

実は全て計画通りの展開なので、頼良は心の中で等々力に合掌していた。
そして次に加代を連れて行ったのは裏山である。

「実はさっき熊五郎くんを連れて来たのもここなんだよ。」
「そうでしたの…『がう。』そうね。クーの故郷に似ているわ。」
「熊五郎くんと出会いがそこだったそうだね。」
「えぇ。狩猟の時期でウチの領地で密猟がされているとの情報があり、父に視察に連れていってもらっていたので、クーを助けられたんです。」
「そうなんだってね…ちょっと加代ちゃんはここで待っててね~」

言い残して何処かに行ってしまった。

「クー。頼良様はどちらに行かれたのかしら?」

呟くと、クーが何かを察知したように頼良が向かった方向を向いて吠えた。
加代はただならぬ様子に、そちらへと走りだした。

「『がうっ!』ここで下ろせ? まぁ!頼良様!」

急な崖の途中に頼良が倒れていた。声が聞こえたのか上を見ると

「足を痛めたみたいだ…加代ちゃん、誰か呼んできてくれないか?」

弱々しく言った。加代が走ろうとした瞬間、クーがまた吠えた。

「クー!どうしたの?」

見ると大きな岩が今にも頼良の頭上に落ちそうになっている。

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