ソウル◆チューン
「どうしよう…クー、どうしたら良いの?『がうっ。』そんな!そんな岩を動かすなんて…『がうっ!』わかったわ。やってみますわ!」

岩に駆け寄ると、力を込めて押す。しかし岩はビクともしない。

「動きませんわ!『がうっ。』相撲をとった時を思い出せ?わかりましたわ。はぁぁ~っ!!えいっ!」

ドスンッと音をたてて岩が飛んで落ちていった。

「はぁ…出来ましたわ…良かった…」
「良くやったね加代ちゃん。」
「えっ!?頼良様!」

座り込んだ加代の横には、いつの間にか頼良とクーがいた。

「加代ちゃんは普通の人と力が違う事に気付いていて、自分が人を傷付けてしまう事を怖れるあまりに、避けてきたんだろう?そして気にしすぎてバランスを失ってしまった。熊五郎くんを抱く事で重心をとっていたんだな。」
「それは…」
「今、私を助ける為に走ったのも、岩を退かしたのも加代ちゃん一人の力だよ。力の使い方や重心を意識すればコントロール出来るんだよ。だから…もう大丈夫。」
「…もう大丈夫?私、私…ぅえぇ~ん!」

加代は初めて人前で大声で泣いた。頼良は優しく抱き寄せて背中を撫でてやる。
それは加代が誰にも見せた事のない子供らしい姿だった―


加代がクーを抱かずに戻ると

「頑張ったな加代。」

頼子は笑顔で出迎え、等々力は両親に報告すると慌てて電話しに行った。

「ごめんなさいね加代ちゃん。私達も師匠に協力していたの。」
「良いんです。なんだか私、自分の力の方向性がはっきりして目の前が開けました。とても感謝しています。」
「残念だが私では分かりやすく道を示してやる事が出来なかった。仕方なく親父に頼んだんだが、まぁ結果が出て良かった。」
「本当に感謝の気持ちをなんて伝えたら良いのか…あら?頼良様は…?」
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