ソウル◆チューン
二人が乗り込むのを確認して

「悪いんやけど、首塚大明神まで飛ばしてくれへん?めっちゃ急いでんのや。」
「ほんまなら断るとこやけど、卜部さんの頼みやからしゃぁないわ。飛ばすで!」
「よろしゅう頼んます!」

タクシーは最短ルートを使って西へと走った。

「もうすぐ老ノ坂峠に入るで~」
「紗季、首塚大明神とはなんだ?」
「もう着くっちゅうのに今さらかいな?まぁええわ。簡単に言うたら酒呑童子の首が祀られとる場所やな。」
「なぁ、首塚の前まででええんやな?そこで待っとこか?」
「おっちゃんは帰ってええわ。なるべくウチら下ろしたら直ぐ離れた方がええな。」
「なんや危ない事でもするんかいな?聞かんとくけど。ほら、もう着くで。」
「ありがとな~。ウチにつけといて!ほな、気ぃつけてな~。」

座席の奥から押し出すようにしながら言うと、走り出している頼子と奈都を追った。

「ちょっと待ってぇな~。そこの鳥居から先に結界が張ってあるわ~。」
「入れるのか?」
「ウチらは大丈夫そうや。普通の人は入れんけど。」

鳥居をくぐると、重い空気が一気にのし掛かってきた。

「おや。ネズミが入り込んだようねぇ…嫌だわ。あらっ?これはこれは…」

首塚の前に禍々しい程に美しい女が十歳位の子供を連れて立っていた。現れた少女達を見てニヤニヤ笑っている。

「何だ貴女は?ここで何をしている?」
「私はただ夫の首を取り戻しに来ただけよ?それより…」

ス~ッと滑るように三人の前に移動すると、顔を間近に近付けて凝視した。

「はんっ!嫌な気配だと思ったら、やはり頼光らの転生か。穢らわしい。」
「貴様、茨木童子か?」
「童子と呼ばれるのは可笑しなものよ。今は蕀(イバラ)と名乗っておる。」

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