ソウル◆チューン
「おい!とっとと起きろ!」
誰かがぺしぺしと頬を叩いている。
親父か?何だ、もう奈都が次のオカズを持って来たのか?いつもこんなに食べないだろ?今日はどうしたんだ…
「……う~ん…奈都…もうそんなに食べられないぞ…」
「夢の中で夢を見てるのか?呑気なやつだなぁ。」
キーンと鉄を鳴らしたような音が急かすように何度も鳴る。
「分かってるよ。童子切、蜘蛛切。ちょっ…」
「なにっ!?」
と待て。と言い切る前に、頼子が飛び起きて頼光の顎に頭突きをかました。
「ウグッ!!…いってぇ!何しやがんだ!」
「すまん!大丈夫か!?」
呻く頼光に対し、頼子は慌てている。…凄まじい音がしたのだが。
「そんな風に落ち着きのないようでは試練に勝てないぞ。」
涙目である。
「…あんた、誰?」
今更な言葉に、大の男がガックリと肩を落とした。
「…俺が源頼光だ…で、いくら俺が起こしても起きなかった癖に、一発でお前が反応した童子切に蜘蛛切だ。」
「そっ…そうか…」
流石に軽い嫌味に気付いて気まずい気持ちにはなったが、頼子の視線は二つの名刀に釘付けだった。
「…お前には、コイツらと戦って勝利して貰わねばならん」
溜め息をついて、その様子に呆れながらも進行はしなくてはと己に言い聞かせる。
「戦うって、あんたがどちらか使うんじゃないのか?」
「俺はお前でもある。だから今はどちらにも加担できん。」
「わかった。私の刀は?」
「どちらでも選べば良い。どちらも名刀だ。」
「…では、童子切を使わせてくれ。」
「では受けとれ。コイツらを退屈させんなよ?」
ニヤリと笑いながら、頼子に童子切を渡す。
刀の感触を確かめるように何度か素振りをすると、構えをとった。
「参るっ!はぁぁっ!」
「楽しんでおいで。蜘蛛切。」
頼子に向かって蜘蛛切を放ると、まるで意思があるように頼子へと立ち向かっていく。
刀の打つかる音と、弾ける音が続き、頼子と童子切と蜘蛛切の攻防が激しくなっていく。
頼子の息遣いも荒くなっていった。
「もうへばったのか?やはり女の体では動き辛いか。」
「くそっ!まだだっ!鞍馬流師範代の名が廃る!」
「ほほぅ。蜘蛛切!手加減無用のようだぞ!」