ソウル◆チューン
判断は奈都に任せるようだ。紗季は奈都の気持ちが分かっていたが、言うつもりは無いらしい。

「…師匠がどうしてもと仰る気持ちも分かります。ただ病室に入るタイミングは私が指示を出した時にして頂けますか?」
「うん分かった。皆の邪魔にならないように待機させて貰うよ。」

奈都は頼良の困り顔に弱かった。許した途端にパァッと笑顔になった頼良に苦笑しながらも胸の奥がキュッと痛んだ。

「じゃぁ私はお風呂焚いてくるよ。皆、疲れてるだろう?」

嬉しそうに立ち去る頼良を三人は見送ると

「奈っちゃんはお人好しやなぁ~」

溜め息をつきながら呆れたように小声で言った。

「?奈都は親父には甘いが、基本的に優しいぞ。」
「頼子…フォローになってないわ…」

理由は分からないが頼子がフォローすると奈都は脱力した。

「なんや。頼子はずっと奈っちゃんとおって気付かんのかいな~。」
「紗季ちゃん!余計な気は回さないでくれるかしら?先ずは母とみつきさんを助ける事に専念しましょう。」

微笑を浮かべながら紗季にプレッシャーを与える。背後に阿修羅が見えた気がして、紗季は

「障らぬ神に祟りなしやな…」

と呟いた。一人事情を理解していない頼子が

「私が何を理解していないんだ?」

紗季に聞く。空気を読まない頼子にひきつる。

「気にせんといてな?大したことでもないかもしれへんしな~。」
「そうよ頼子。私が頼子に隠し事なんてする訳がないじゃない。」
「別にあっても構わないが、一緒に住んでればある程度隠し事が出来なくなる場合もあるしな。負担にならなければ良いが。」

動揺している紗季をフォローするつもりで言ったのだが、頼子は心配しているだけのようだ。

「はぁ…頼子。自分はウチなんかよりずっと深い人やなぁ~。」
< 40 / 64 >

この作品をシェア

pagetop