ソウル◆チューン
 一方、奈都は渡辺綱と対峙していた。

「ということは、髭切と私が戦い、認められれば良いのですね?」

一定の距離を保ちながら会話をしているが、綱はずっと難しい顔で考えながら、主旨説明をしていた。

「だが、貴女には武器が無い。私は公平でなければ納得いかないな。」

あくまでも奈都の身の安全を主張している。

「そういう考え方は素晴らしいと思いますが、戦では公平な武器を使用する訳ではないでしょう?」
「それはそうだが、丸腰の人間とは戦えない。…貴女は真剣を使った事はありますか?」
「私は鞍馬流剣術の門下です。幾度かは使ってます。」
「刀を振るう事に抵抗は?刀は身を護る武器にもなるが、反せば自分や人を傷付ける刃にもなる。」
「それでも私は、私自身よりも家族や周囲の人達をできうる限り守りたい。私の為に傷付く人がいるのであれば尚の事でしょう。」
「相手がどんなに恐ろしい妖怪であっても…ですか?」

挑発的な言葉に、奈都は厳しい視線を投げた。

「それでは、貴方は恐ろしいから、武器が無いからといって、家族や周囲の人達が危険に晒され隠れていられますか?」
「私は武士だ。どんな事であろうと敵に背中を見せる訳にはいかない。」
「武士であろうとなかろうと、私がやらなくてはならないなら、やるしかないでしょう。」

奈都の揺るがぬ気持ちを聞いて、綱は柔らかな微笑みを浮かべた。

「貴女はなかなか豪気な方のようだ。その心構えならば、使命を果たす事も出来るでしょう。私と髭切は貴女の守護となります。」
「それでは私を認めてくださるのですね?」
「はい。三神には必ず戦う事。とは言われてませんでしたしね。貴女の考えを確かめ、納得すれば良いかと。」

肩を竦めて飄々と言う綱もかなりの策士のようだ。

「話し合いで解決出来るのであれば、無用な勝負をしなくても良いですものね。」

負けず劣らず微笑んでいる奈都もかなりのものである。

「貴女が話の分かる方だと思えばこそですよ。」
「ところで、頼子の試練は終わったでしょうか?」
「彼女は随分と刀に興味を持たれていたようですね。」

その言葉に、奈都は微妙な沈黙をした。

「…幼少から剣術に励んでいましたから。」
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