ソウル◆チューン

くまとお嬢様!?

 頼子と奈都はの通う中学校は、二人と頼子の父が住む家から五km離れた、はっきり言って人里離れた山である。
裏山で畑や狩りや山菜を収穫し薪を集め、薪で火力を井戸が生活用水、山から下りてくる小川で釣りをし、水車まである自給自足の生活をしている。
広いのが取り柄の平屋の自宅があり、側に小さな道場があった。
貧しいのかと言われるとそうでもなく、一貫した生活は全て父親の主義だった。

「奈都、良かったな。洗濯機だけは入れてもらえて。」
「私は別に良かったんだけど、師匠が気遣ってくれたのよ。」
「親父の下着まで洗わされてるんだ。当然の権利だろ。」
「あら、師匠が厳しいのは稽古の時だけよ?とても優しい方だと思うわ。それに家事以外の事は頼子と二人で全部やってくれるし。」
「…どうも家事は苦手でな。任せっぱなしですまないとは思っている。」

料理、洗濯、裁縫が苦手な頼子は渋い顔をした。

「私は好きだから良いのよ。それに、お掃除や片付けはしてくれるじゃない。」

笑いながら中学生らしくないが、たわいもない会話をして歩いていると長い道のりもそう感じない。

「珍しい。高級車が走ってくるぞ。」

ふと振り返り、頼子はさりげなく奈都を道端に寄せた。
そのまま車は二人に並ぶようにスピードを落として走っている。

「何だ?早く追い抜けよ。」

車中から誰かにじっと見られている気配がする。
ゆっくりと後部座席の窓が降りると、そこには意外にも、熊のぬいぐるみを抱いた可愛らしい女の子がいた。

< 9 / 64 >

この作品をシェア

pagetop