ギャップ
__指定席___
文化祭を目前にした校舎は、


興奮を抑えられない弾ける笑い声で溢れ華やいでいた。



「わり~、時間潰して待っててよ」



後ろ手を振り、彼はライブのミーティングへと行ってしまった。



・・・・時間潰せって言っても・・・・・



そこかしこで盛り上がる生徒の塊を眺めながら、足はその場所へ向かっていた。



重いドアを押し開けると、外とは別世界の冷静な時間が流れる。


ここは落ち着く。


古い本の匂いが好き。


バンドをやっているような彼がこの場所を好きなわけがなく


最近遠のいていた場所。



彼と付き合う前は毎日のように訪れていた場所。



そして、行き慣れた場所を足は自然と目的地へと向かった。


学習室の一番奥


窓際だけど、大きな楠がちょうどよく日差しを和らげてくれる



私の密かな指定席



・・・・・・そこには先客がいた。



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