ギャップ
その人は、デスクに足を投げ出しイスにもたれ掛かり眠っていた。


顔に被せられた単行本はエミリー・ブロンテの「嵐が丘」


顔は見えないけど、


読んでいる本とは不釣合いな茶色く染められた髪。




久しぶりに自分の時間を楽しもうと思っていたのに・・・・


肝心の場所が空いていないなんて・・・・・


よし!どくまで持ってやる!


その列の離れた席に座り、本を読みながらその人を見張った。



そのうち本に読みふけってしまい、ふと気がつき目を向けた。




さっきまで眠っていた彼は椅子に深く座り、片手で単行本を持ち


時々髪を弄りながらページをゆっくりめくっていた。



その人は、一つ上の先輩。


ちょっと柄が悪い類のグループにいて、よく目立つ人。


この場所には全く無縁のようなその人は


真っ直ぐな眼差しで文字を追いかけていた。





・・・・こんなに綺麗な顔していたんだ・・・・・



時々楠の木陰から差し込む日差しを浴び、髪の毛がキラキラした


目が離せない・・・・


・・・・気づかれる・・・



髪をかきあげ、文字から離した目が私とぶつかってしまった。


 
思わず頭を下げた私に、彼も頭を下げ答えた



そして何もなかったようにまた彼は文字を追い掛けた



もう・・・・本の内容は頭に入っていかなかった。









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