ギャップ
その日から彼のバンド練習を待つ場所はここになった。



私の指定席は、あの日から変わった、



あの人の席の並び。



そして、あの人もまた毎日あの場所で本をめくったいた。



名前は知っているけど、読んだことのない有名な文学書を


真っ直ぐな眼差しで読むその顔が・・・・好きになってしまっていた。




1冊読み終え、次の本を探していた時だった。


しゃがみ込み下段の本を眺めていると、


視界に大きな上履きが入ってきた。



見上げると、上段の本を眺めるあの人。



慌てて立ち上がり、目の前の本を見つめた。


静かなこの場所だと、鼓動が聞こえてしまいそうだ。


持っていた本をギュッと胸に押し当てた。



・・・・こんなに背が高かったんだ・・・・



横目であの人を感じた。




「それ、取ってもいい?」



目をやるとあの眼差しが私を見ていた。


「えっ?!」


そしてその眼差しは私の目の前の背表紙へと向けられた。
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