空港で、あなたと【TABOO】
「――そうだよって言えたら良かったかな。
 彼氏が出来たんだったら」
 小さく呟くと、がらりと雰囲気をかえて私を見る。

「旅行、楽しんでおいで。
 彼氏と一緒?」
 大好きな甘い笑顔を浮かべると、あの頃のように子供扱いしてひらりと手を振ってくれた。

 じゃあ、と、笑顔で手を振ればいいのに、思わずスーツの裾を掴んでしまう。

「一人旅です」
 わざわざ言う必要ないのに。
「それはとても心配だな」
 部長は私の大きなスーツケースを見て、眉を潜めた。
 その顔が、声が、相変わらず私好みで不謹慎にも胸がときめいてしまう。

――出会う順番が、逆だったらよかったのに。
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